愛しの魔王サマ
「過去を聞くなと、過去は関係ないと言ったのはお前だろう」
「は、はい・・・」
「ならば、お前も過去を気にするな。お前は何に怯えている。お前が怯えているのは、過去にじゃないのか?人に気にするなというのなら、お前自身も気にするな」
エマの腕を掴むとグイッと引き上げ立たせる。
スカートを手ではたいてやると手を放した。
「お前の今の主人は俺なのだろう?俺をよく見ろ。怒っているように見えるか?」
「・・・いえ」
「だろうが。俺は、召使いがいくら失敗しようと、俺より遅く起きようとそんなことで怒るような小さい魔王ではない!」
「魔王さま・・・」
「かつてお前がどのような主人に仕えていたのかは知らんが、そんなもの捨て置け!今は俺が主人だ。俺が、お前の主であろうが」
まったく、バカバカしい。
そんな者たちと並べられるなど、俺の名が廃る!
「お前がどんな失敗をしようと、もうお前は俺のものだ。誰にもやらん!」
「魔王さま・・・私は、ここにいていいのですか・・・?」
「当然だろう。なにを当たり前の事を聞いている」
プレゼント、というのはそういうものだ。
簡単に捨てられるものではない。
こいつを捨てるということは、アドルフの想い(どんなものかは知らんが)も共に捨てることになるのだ。