愛しの魔王サマ


父がいなくなり、母は壊れた。
ずっと塞ぎこんで、泣いてばかりいた。

私が弟の面倒を見て過ごしてた。




「ねぇね、父さんはいつ帰ってくるの?」




そんな弟の問いにも、私は答えられなかった。




父が死んだ1年後、母が自殺した。





母は父が全てだった。
父の事を愛していた。


だから、父のいない世界に嫌気がさしたんだろう。




私たち家族がいたのに。





母には、私たちの姿が映っていないようだった。





私たちは、別々の施設に預けられた。
本当は一緒がよかったけど、空きがないのだという。



きっといつか一緒に暮らせる。
そう信じて、弟の手を放した。




< 56 / 293 >

この作品をシェア

pagetop