愛しの魔王サマ
父がいなくなり、母は壊れた。
ずっと塞ぎこんで、泣いてばかりいた。
私が弟の面倒を見て過ごしてた。
「ねぇね、父さんはいつ帰ってくるの?」
そんな弟の問いにも、私は答えられなかった。
父が死んだ1年後、母が自殺した。
母は父が全てだった。
父の事を愛していた。
だから、父のいない世界に嫌気がさしたんだろう。
私たち家族がいたのに。
母には、私たちの姿が映っていないようだった。
私たちは、別々の施設に預けられた。
本当は一緒がよかったけど、空きがないのだという。
きっといつか一緒に暮らせる。
そう信じて、弟の手を放した。