愛しの魔王サマ
それからの日々は、思い出したくもない。
私が預けられた施設は、とてもずさんなところで。
寝る場所を提供しているだけのようなところだった。
食べるものや着るものは、自分で確保しなくてはいけなかった。
メイドの仕事を始めたのはこのころ。
いろんな主人のところで務めた。
メイドという名の、奴隷のような扱いのところもあった。
生きるために、なんでもした。
やれと言われたことは、すべてやった。
辛くて、苦しくて、悲しかったけれど。
いつしか、心を失くせば辛くないと気付いた。
働き始めたのは、早く弟と一緒に暮らしたかったからなのに。
いつしか、なんの為に自分がそこにいるのかわからなくなっていた。