愛しの魔王サマ
私の失態に、怒ることをしない。
何度頭を下げても、下げたことに怒る。
訳が分からなかった。
この人は魔王なのに。
魔族で、人間ではない化け物。
それなのに、今までに仕えてきた人間の方がよほど化け物だと。
――俺は、召使いがいくら失敗しようと、俺より遅く起きようとそんなことで怒るような小さい魔王ではない!
――お前がどんな失敗をしようと、もうお前は俺のものだ。誰にもやらん!
失敗をすれば罰を与えられ、そのまま放り出されるばかりだった過去。
それなのに、この魔王さまはそう言った。
過去を忘れろと。
俺を、見ろと。
そう言って、抱きしめてくれたのだ。
それはきっと、慰めというもので。
かつて母や父が、私が泣いていた時にしてくれていたこと。