愛しの魔王サマ
「ルカさま・・・」
「なーにしてんの?ん、エマがいるってことは、まおーさまもいる!?」
天真爛漫、その言葉がお似合いのルカさまはきょろきょろと辺りを見渡す。
魔王さまをお探しなのだろう。
「残念ですが、魔王さまはいらっしゃいません」
「え、そうなの?なーんだ」
ちぇっ、と唇を尖らせながら呟くと、私が座っているベンチの隣に座った。
私は慌てて立ち上がろうと腰を浮かせる。
「え、逃げないでよ」
それをルカさまが手を引き、引き止めた。
ルカさまも、魔王さまの家来の方とはいえ私より上のお方だ。
それなのに、隣に並んで座るなんて・・・。
「あの、私、下でいいので」
「下?なにが?」
「ルカさまと並んで座るわけには・・・」
「・・・なんで?」
不思議そうに首を傾げられる。
ここの方は、皆このような方ばかりなのだろうか。
ルカさまは、目に見える耳も人間にはない尻尾もある。
魔王さまは、見た目は人間である私とさほど変わらないけれど、爪は鋭くとがっているし、口元には牙も見え、耳もとがって人間のそれとは別物だ。
それはこの方たちが人間ではなく、魔物なのだと証明しているのに。