愛しの魔王サマ


「ルカさま・・・」

「なーにしてんの?ん、エマがいるってことは、まおーさまもいる!?」



天真爛漫、その言葉がお似合いのルカさまはきょろきょろと辺りを見渡す。
魔王さまをお探しなのだろう。



「残念ですが、魔王さまはいらっしゃいません」

「え、そうなの?なーんだ」



ちぇっ、と唇を尖らせながら呟くと、私が座っているベンチの隣に座った。
私は慌てて立ち上がろうと腰を浮かせる。




「え、逃げないでよ」



それをルカさまが手を引き、引き止めた。
ルカさまも、魔王さまの家来の方とはいえ私より上のお方だ。
それなのに、隣に並んで座るなんて・・・。



「あの、私、下でいいので」

「下?なにが?」

「ルカさまと並んで座るわけには・・・」

「・・・なんで?」



不思議そうに首を傾げられる。
ここの方は、皆このような方ばかりなのだろうか。



ルカさまは、目に見える耳も人間にはない尻尾もある。
魔王さまは、見た目は人間である私とさほど変わらないけれど、爪は鋭くとがっているし、口元には牙も見え、耳もとがって人間のそれとは別物だ。


それはこの方たちが人間ではなく、魔物なのだと証明しているのに。




< 62 / 293 >

この作品をシェア

pagetop