愛しの魔王サマ
「ルカさま方は、なぜそんなにもお優しいのですか」
「優しい?俺が?」
幼い頃母に読んでもらった物語では、いつだって魔物は悪役で。
魔王はいつも最後は人間に倒されて葬り去られる。
魔物は怖いものだと。
怖ろしい生き物なのだと。
化け物だと――――。
「もしかして、食べられるとか思った?」
「そんなことは・・・」
「食べないよ。安心して」
にっこりと笑うその顔はとても穏やかで。
とても澄んでいると思った。
「・・・まおーさま、らしくない?」
「・・・よくわからないんです」
「確かに、まおーさまは、争いごとを好まないし、俺は魔王だ!とか言ってるけど、力で魔物を従えたりしない。すっげぇ優しい方だよね」
「はい・・・」
「俺さ、ライカンスロープなんだけどさ」
「はい」
「できそこないなの」