愛しの魔王サマ
「アドルフ、・・・無用な殺生は許さんぞ。なるべく穏便に帰ってもらえ。それから弱い者たちを安全なところへ、魔界全体に緊急を知らせろ」
「・・・かしこまりました」
アドルフは頭を下げると背を向け走り去った。
この城の者たちは強いものばかりだ。
「行きましょう、魔王さま」
「・・・ああ」
エマと連れ立ち安全な隠れ部屋に向かった。
そこは鉄の扉に閉ざされた薄暗い場所。
本来なら、あまり来たくない場所だ。
あの場所を、思い出す・・・。
「ここにいれば、安心でございます」
「ああ・・・」
エマが蝋に灯りをともし側に置く。
「お前も隣に座れ」
「いえ、私は」
「座れと言ってる」
強く言うと、エマは諦めたように俺の隣に座った。