愛しの魔王サマ
「魔王は、数千年以上昔に生まれた。それはこの魔物の地、魔界と同じく誕生した」
エマは話し始めた俺の声に耳を傾けているのがわかる。
真面目なこいつの事だ、一言一句聞き逃すことなく聞くんだろう。
「生まれては封印され、幾年も眠り、生まれては再び封印される。なぜ封印されるのか、それが必要だからなのか、理由はわからない」
「・・・はい」
「お前は、俺への贈り物としてここに来ただろう」
「はい」
「俺が封印から覚め、あの日で三年がたったからだ」
「三年・・・」
封印されていた数千年を想えば、三年など微々たる時間。
それでも、俺が確かにこの足で歩いてきた時間なのだ。
「それまでの俺がどうであったかは知らない。俺が封印から覚めた時、俺はすべての事を覚えていなかった」
「え・・・」
「自分の名も、なぜそこにいるのかも、自分が何者なのか、きれいさっぱりわからなかったのだ」