愛しの魔王サマ
「俺は何も知らない。この世の事も、魔物たちの事も、ましてや人間の事など」
「・・・」
「知らぬのに、悪だと決めつけることはできない。こちらにとっての正義が向こうにとっての悪になることもありうるのだから」
争い事が嫌いなのは、俺のもともとの性質なのか。
それとも、本来の魔王のそれなのか。
俺には確かめようがない。
アドルフなら知っているだろうか。
あいつは、魔王と魔界と共に生まれたと言っていた。
それならば、昔の俺をどれほど知っているのだろうか。
昔の俺にも、今のように従っていたのだろうか。
あいつは、必要以上の事は俺に言わない。
でも俺は、あれの言葉を信じるしかないのだ。