愛しの魔王サマ


「だとすれば、魔王さまのおかげです。魔王さまは、私が失敗しても無闇に怒ったりしません。私の事を気にかけてくださいます」

「そうか?」

「はい。初めてなのです。だから、戸惑ってます。本当はダメなのに・・・」

「なぜだめなのだ」

「ここはぬるま湯のようです。ここに慣れてしまえば、きっと私、生きていけません。他で耐えられなくなります」




なんだ。
そんな事で怯えていたのか。




「なぜここから出ていくことを考えて怯えているのだ。お前は俺に与えられた贈り物だ」

「え・・・」

「俺はお前を手放したりはしないぞ。お前の命尽きるまで、俺の側にいればよい」




元よりそのつもりでいるのに。
こいつは、全くその気がなかったという事か。



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