愛しの魔王サマ
「仕方ない。特別だぞ」
「・・・え」
袖でエマの涙を乱暴に吹きながらぶっきら棒に言う。
エマには優しいと言われたが、意図的に優しくするのは、苦手なのだ。
「マオと呼ぶ事を許可してやる」
「え・・・」
「魔王さま、ではなく、マオさまと呼べと言ってるんだ」
なぜだろう。
エマには、そう呼んでほしいと思った。
地位ではなく、マオと名前を呼んでほしいと。
「・・・マオさま」
エマは、拒むかと思ったが、案外素直にそう呼んだ。
それに気を良くし、気づかれないように笑った。