愛しの魔王サマ


「ご安心を、死者は出ておりません」

「そうか」

「ですが、おそらく再び襲ってくるかと」



それはそうだろうな。
俺は椅子に深くもたれかかり、椅子はギギギと音を立て軋んだ。



「その時は、俺が出る。直接要求を聞こう」

「聞いたところで、相手の要求は魔王さま自身なのですよ

「知っている。・・・あいつらにとっては、俺が悪なのだろう」




これほどの行動を起こすのだ。
それは自分たちが正義だと心から信じているから。

なぜ信じられるのか?
それ程の確証があるのか?




「なあ、アドルフ。俺は、悪なのだろうか」

「魔王さま。人間の言葉に惑わされてはいけません」

「・・・なぁ、俺は、自分が悪なのか正義なのか、それすらもわからないんだ」





吐き捨てた言葉は、重く自分にのしかかる。
身動きが取れず、俺を縛り付ける鎖のように。



お前は誰だ。



そう聞かれて、俺は何と答えるのだろう。





魔王だ、と迷いもなく言えるだろうか。




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