愛しの魔王サマ
「マオさまも、よく言っておられるではないですか。善と悪は、立つ立場によって違う事もあると」
「それはそうだが」
「マオさまは、マオさまです。深く考えることはないのでは?」
まぁ、それもそうだな。
なにをいじいじと考え込んでいるのだ。
俺らしくもない。
「そういう時こそ、ルカを呼ぶべきでしょうかね」
「なっ!あ、あいつはよい!うるさいだけではないか!」
「たまには、そういうものの中にいることが良しとなることもあるでしょう」
「そんな時など、そうそうこんわ」
バカみたいに明るい、能天気な男。
あいつ、初めて会ったころはあんなではなかった気がしたのに。
どこでああなってしまったものか。
あの頃はもっと、ダークな雰囲気を醸し出し、この世のすべてを恨んでいるかのようだったのに。
「そうですか。なら、今まで通り、エマに付かせておくことにしましょう」
「ああ、それでいい」
「すっかり、お気に召したようですね」
「別に、お前がいないのだから、仕方なくだ」