愛しの魔王サマ



「マオさま、何かご用はございますか?」



アドルフと別れ自室にいると、アドルフに言われたのかすぐにエマが訪れた。
特別何か用があるわけではない。

もう公務はないし、今は夕食までの自由な時間だ。



「・・・お前、この間貸した本は、どれ程進んだ」

「え、と・・・、まだ第1章が終わったところでございます」

「1章?あれは、全10章ほどある長作だったな。まだそこか」

「は、はい。時間を見つけては読んではいるのですが」

「どうせ、いろいろと仕事を溜めこんでいるのだろう」




余計な仕事にまで手を出して、慌ただしく過ごしているのが目に見えている。
こいつは、俺が気にかけていないと休むという事を知らん。



「その本を持って来い」

「あ、読まれますか?少々お待ちください」



まったく見当違いの返答をして、部屋を後にする。
だが、そういったあいつの顔は、ぎこちなくも微笑んでいた。



< 85 / 293 >

この作品をシェア

pagetop