愛しの魔王サマ
あの日以来、仏頂面の無表情だったエマに、少しだけ表情が柔らかくなったように思う。
なにかに怯えたような顔も、しなくなった。
「お待たせいたしました。はい、こちらです」
「ならば、それを持ってあの椅子に座って続きを読め」
「え・・・」
「それとも、お前の自室の方が気が休まるか?まぁ、それはそうだろうな」
「いえ、あの」
戸惑ったような表情に、眉を寄せエマを見ると深くため息を吐いた。
いい加減、慣れろと言うのに。
「今俺は、なにもすることのない自由な時間だ。それはわかっているだろう」
「はい」
「ならば、俺のメイドであるお前も自由な時間だ」
「ですが、メイドというものは・・・」
「他は他だと言ってるだろう」
ギロリと睨みつけると、口を噤む。