愛しの魔王サマ
「生憎、お前がバタバタと動かんでも、この城にはお前以上に優秀な家来は山ほどいるのだ」
「・・・はい」
「だから、任せておけばよい。だから、今はお前も休みだ。その本を読むのが嫌なのなら、他に自分がしたいことをここに持ってきてやればよい。自室に戻りたいのなら戻ってもいい」
「・・・この本を、ここで読ませていただいてもよろしいですか」
「ああ。読んだら早く感想を聞かせろ。アドルフは、あまり感想を言い合って楽しむという感覚がないらしくな。つまらんのだ」
エマはためらいながらも椅子に座り、本を捲った。
まいどまいど手間のかかる奴。
それでも、放っておけないのはなぜなのだろうな。
本を捲る音だけが響く室内。
耳を澄ませば、エマの息遣いも聞こえてくる。
それがやけに心地がいい。
「今度からも、俺が自由な時間はお前も自由にしていていい。まいど言うのも疲れるからな」
「本当に、よろしいんでしょうか」
「お前の主人は俺であろう。その俺がいいと言っているのに、いけない理由がどこにある」
「ありがとうございます・・・」