愛しの魔王サマ
Ⅲ
①予兆
「もっと俺を褒めて!まおーさま!」
うっとおしいほどにまとわりついてくるルカ。
この間の人間襲撃の時の事を相変わらず騒ぎ立てる。
なんでも、こいつが一番活躍し人間を撃退したのだという。
まぁ、本人談だ。
どこまで本当なのかはわからんが。
「俺のおかげで、魔王城は傷一つつけられず、足を踏み入れられることもなく済んだんだ!」
「・・・そうか。それはご苦労であったな」
「心を込めてよ!」
「・・・アドルフ。こやつをどうにかしろ」
暑苦しくまとわりつく腕をほどき、身体を抜け出すとルカは心底不機嫌そうに頬を膨らませた。
大の大人の男がそんな顔をしてもかわいくないというのに。