愛しの魔王サマ
「返せ、と」
「返せ?なにをだ」
「いえ、そこまでは」
アドルフの言葉に、眉を寄せ考え込む。
人間たちのものなど、なにもとった覚えはない。
それとも、俺の知らない過去の俺の仕業なのか。
「アドルフ、過去の俺は、なにか人間の物を奪ったことがあるのか」
「・・・それは、」
「――――あるのだな」
眉間にしわを寄せ苦渋の表情を浮かべるアドルフに、それを察する。
俺にとっては、覚えていないことだとしても人間にとっては長く語り継がれるほどのものを奪ったのだろう。
「ですが、それは人間とて同じこと!人間もまた、私の大切なものを!!」
「私・・・?」
珍しく声を荒げたアドルフは、悲しげな表情で思わず口走ったようにハッとしそのまま俯いてしまう。
なんのことを言っているのだ。