愛しの魔王サマ
「お前は、俺を魔王だと言った。そう言って迎えに来た。俺は、それを受け入れ今この時まで来てしまったが。それは、本当に真実か?」
「なにを、おっしゃるのです」
「まおーさま?」
俺の言葉に、息をのむアドルフと首をかしげるルカ。
俺はまっすぐとアドルフを見つめ問う。
「お前の言葉に、嘘は一つもないのだと、本当に信じてよいのか?」
「当たり前です!私は嘘など一つも!マオさまがこの魔界を統べる魔王さまです!私は、あなた様にずっとついてまいりました」
「そうか」
なら、そうなのだろう。
でも、俺は知っている、気づいているのだ。
アドルフが、なにかを隠していることくらい。
言えぬ、なにかがあることくらい。
たかだか3年。
魔界に生きる者たちの生きる長さと比べれば他愛もないちっぽけな時間。
それ程しかたっていないが、それでもわかるようになったのだ。
アドルフが、なにかを抱え、一人苦悩していることくらいは。