愛しの魔王サマ


「・・・すまない。部屋に戻る」

「マオさま・・・」




立ち上がり歩き出した俺の背にアドルフの戸惑った声が聞こえた。
考えがまとまらない。

自分が、なにをしたいのか。
なにを知りたいのか。





「マオさま」

「・・・エマ」



自室に戻ると、俺を追ってきていたエマが躊躇いがちに声をかけてくる。
エマに視線を向け、考えを巡らせた。




「俺は、魔王だ」

「・・・はい、マオさま」

「そう、叫んでいないと時折不安になる」




心の中の焦燥感。
確かめるように、言葉にして。

自分に言い聞かせるように何度も、何度も。


そうしていないと。



「自分が、何者なのか、わからなくなるのだ」





俺が今手にしたものは、すべてあてがわれた、用意されていたものだ。
自ら手にしたものは、なにもない。




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