竜門くんと数学のお時間
だけど、竜門くんへの恋心に気付いている私としては、ちょっと、友達だと物足りないのである。
「うー……席変わるかもしれない前に1回くらい名前で呼んでくれないかなぁ……」
そしたら、ドキドキのバロメーターが振り切って、積極的にアピール出来ちゃうのに、と思う。
まあ、ね、確信はないんだけど。
自分のつぶやきに少し照れながら、芹ちゃんを見ると呆れた顔をされた。
「いやあんた〝 犬 〟終わらなきゃ、〝 花 〟なんて呼んでもらえないでしょ」
「………ハッ!」
なんてこと!
芹ちゃんに言われるまで気付かなかったよ!
となれば、私がすべきことは……。
「芹ちゃんっ! ……… わ、私! 私ね! テスト前に〝 犬 〟卒業する!」
つっかえながらも ババン! と決意表明をした私を見て、芹ちゃんは興味なさげにポケットから携帯を取り出した。
「まじかー、1週間ないけど頑張れー」
「うん! 芹ちゃんありがとう!」
「はーい」
携帯から少し目を離し私を眺めた芹ちゃんは、おかしそうに笑った。
「芹ちゃん? なんで笑ってるの?」
「花、変わったなって思ってさ」
「変わった? 私が? え、どこ?」
驚いて聞き返すと、芹ちゃんは少し考える素振りをした。
「なんか何事にも積極的になった、かなぁ、って思うよ」
「えー? うっそだー」