竜門くんと数学のお時間
「はぁあ、怖い……」
授業を自らすっぽかすなんて初めてで、ちょっと、いやかなりドキドキしている。
こういうのをなんて言うんだっけ。
ボイコット? エスケープ?
そんな感じだったかな。
どうでもいいことを考えながら、せっかくトイレに来たからということで、鏡に自分を映して髪を整える。
竜門くんに会う前の身だしなみチェックである。
「んーよしっ!」
なかなか良い感じにまとまった髪を今一度念入りにチェックして、トイレを後にした。
さてさて、特Eはすぐそこである。
「あれ」
それなのに、ここに来てまさかのハプニング。
今更ながら授業が始まっているのに私が特Eに来ることは、おかしいということに気付いたのだ。
同じクラスならまだしも、竜門くんと私はクラス違うし、私が突然現れたら竜門くんは何と思うだろう。
うあー、困った、どうしよう。
トイレと特Eの前を右往左往する私。
とりあえず自分の教室に戻って芹ちゃんに相談……は無理か。
だって教室に戻ったらもう抜け出せないだろうから。
それに、ここに来て引くことは良くないし、あり得ちゃいけない。
芹ちゃんが準備してくれた好意を無意味にしたくはないもの。