竜門くんと数学のお時間




指で彼の頬を優しくつついてみる。



「………ん」


「…!」


すると竜門くんが身じろぎをした。


驚いて危うく声が出そうになって私は、口を必死に抑えた。


竜門くんはというと、私の指を跳ね返すようにして動き、また寝息を立て始めた。


彼が起きなかったことで今の私は、安堵の表情になっていることだろう。


そして落ち着いたら、また竜門くんの寝顔を眺める。


私、贅沢しちゃってるなぁ。


こんなに綺麗な寝顔を拝めるなんてラッキーだ。


芹ちゃんにあとでカレーパン奢らなきゃ。


えへへ、なんかすごく嬉しいな。


今の自分気持ち悪いだろうなぁ、と思いながらもやっぱり緩む頬。



………あ、そうだ!



いいことを思いついた私は、携帯をポケットから取り出した。


ロックを解除して、カメラを起動させる。



竜門くんごめんなさい。


吉野花、あなたの寝顔を盗撮します。



カメラのシャッター音が鳴る場所を親指で押さえて、ピントを彼に合わせて。


───パシャッ。


あ、あれ、音でか……。


ちゃんと押さえられてなかったのかな。


失敗、失敗。


でもしっかり竜門くんの寝顔を私のカメラロールに収められて、吉野花は幸せです。



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