竜門くんと数学のお時間
私の視線を一身に受ける竜門くんはというと。
「………はぁ?」
時間差で、彼らしからぬ間抜けな声を出した。
「お前クラス違うんだから、俺を呼びに来る必要ないだろ」
…………なんでそうなるっ!!!
「や、呼びに来たんじゃないの。会いに来たんです!」
「は? 何が違うのかわかんねーし」
「だから! 竜門くんに会いたくて来たってこと!!」
もう私の気持ちが伝わってしまえ!
どうとでもなれ!
そんな気持ちで思い切って言ったのに、
「ふーん。じゃあなんで俺に会いたかったわけ?」
口の端をあげて笑う竜門くんは、どこまでも意地悪で欲しがりです。
ここで「竜門くんのことが好きだから!」なんて言えたら素晴らしいのかもしれないけれど、犬を卒業してから告白したい。
とりあえずせめて人間認定されてる時がいいかな、と思って。
「えと……」
「何、言ってみろよ」
「……犬を、ね」
「犬?」
「い、犬を卒業させていただきたく思っておりまして……」
そう言えば、なぜかだんだんと竜門くんの表情が濁った。