竜門くんと数学のお時間




姿を見ただけで頬が緩むなんて、そうとうやられている。


私たちが教室に入ったせいで中断した授業が再開された。


と言っても、配布された応用問題のプリントを各自やるだけなのだけれど。


カバンから教科書と筆箱を取り出して前を向いた時、後ろから飛んできた折りたたまれた紙の切れ端が机に転がった。



〝 サボってんじゃねーよ、ばーか 〟



バカにされているのに、わざわざ切った紙に字を書いて私に投げてきてくれたことが嬉しい。


竜門くんの斜め右に上がった字の紙を大切に筆箱にしまう。


そして、ちょっと大きめな紙に芹ちゃんと話した質問を彼に投げる。



〝 なんで私が犬卒業したいって言ったら怒ったの? 〟



投げてから少し時間が経って、返事が飛んできた。



〝 お前に嫌われたのかと思った 〟



え………。



〝 私に嫌われたら困るの? 〟



一瞬フリーズしながらも理解すると、いいように勝手に解釈して、口では絶対言えない言葉を思い切って書いてそれを渡した。



〝 別に困らねーし。調子のんな 〟


〝 調子のってないです 〟



ちぇっ、困るって言ってくれるかもって期待したのに。



〝 お前こそなんで急に犬やめたいとか言ってきたわけ? 〟



………うわっ、えっ!?


変に取り乱した私は、困っていた。


ここはどう返したらいい?



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