竜門くんと数学のお時間
わからないなら、芹ちゃんにアドバイスしてもらおう。
芹ちゃんに助けを求めようとスカートのポケットに手を突っ込むと、その手を後ろから強く掴まれた。
「お前の率直な言葉が聞きたい」
彼は、私が芹ちゃんに助けを求めることがわかっていたのだろう。
竜門くんは、振り返った私を逃すまいと一心に見つめてきた。
「っ、……」
一度目が合えば、もう逸らすことはできなくて。
気が付けば私は、小さく頷いていた。
「……あのね」
話し始めた私から、彼は手を離した。
「……犬をやめなくちゃ、私、竜門くんに女の子として見てもらえないと思ったの」
竜門くんは黙ったまま、私を見ている。
少しくらい何か反応してくれたっていいじゃん。
「犬じゃダメなんだって、それじゃ意識してもらえないって、気が付いたの」
ねえ、なんで能面みたいな顔をしているの。
いつまで経っても反応がない彼にわからせようと、私は席を立って彼の机にドンと両手をついて、
「犬として見られる私じゃなくて、女の子の私で、告白したいんだもん!!」
等身大の女の子な自分が、そう叫んだ。