竜門くんと数学のお時間
一瞬目を見開いた竜門くん。
そして次に私に見せるのは、あの無邪気な子どものような笑み。
「俺も、花が好き」
名前で呼んでもらえて、好きだと言ってもらえて、竜門くんの笑顔にドキドキして、体温が上がる。
「だいすき!」
その笑顔を見れたことが、晴れて犬から彼女へ昇格したことが嬉しくて、思わず彼に抱きついた。
うわ、っと驚いた風な竜門くんだけど、しっかり支えてくれた。
教室内は、拍手喝采。
やっと実感が湧いてきて、えへへ、と笑う私を優しく抱きしめる竜門くんは、恥ずかしそうに天井を仰いだ。
そんな彼が可愛くてまた笑う私は、彼を呼んだ。
「りゅーもんくんっ」
「何」
「これからは〝 花 〟って呼んでくれるの?」
すっかり調子にのっている私は、緩みまくった顔で彼にそう尋ねた。
「呼んでほしい?」
「うんっ」
「じゃあ、たまに呼ぶ」
「えーいつもがいいよぅ」
駄々をこねるようにそう言えば、私を離して机から降りて行儀よく椅子に座った。
そして、口を手の甲で隠して、毒を吐いた。
「ばーか」
そっぽを向く彼のシャープな横顔が、そうやって照れ隠しで毒を吐くのが、すごく愛しい。
また、彼の好きなところが増えた。
「……毎回名前呼びするのは、俺が恥ずか死ぬから」
少し視線がこちらに引き戻されて、また恥ずかしそうに逸らされた。