竜門くんと数学のお時間




あわわわ。


やばいどうしよう。


男の子の手が髪に触れるなんてことないからビックリしちゃっただけなんだけど……。


不機嫌になってしまった竜門くんが一転、「あー」と呟いた。



「なにお前、男と話すこととかあんまりないわけ?」



ギクリ。


なんだかわからないけれど、危険信号が出てる気がする。


だってほら、その顔さっきも見たよ。


とびっきり楽しいおもちゃを見つけて、悪巧みをしているような顔。



「じゃあ、男慣れできるように俺が協力してやるよ」



うげっ、嫌な予感的中。


でも別にそんなに男子が苦手なわけではないから、協力してくれなくていいよ。



「け、結構で」


「あ?」


「………お、お願いします」


「しょうがねーからお願いされてやるよ」



いや、本当に結構です、だよ……。


お願いしたくないのに、竜門くんの圧に押されてお願いしてしまった私はもう涙目。


そんな私を見て彼は満足気。


やだなぁ、もう。


薄々感じていたことが確実にわかってしまった。


厄介な人に、捕まってしまったことに。



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