竜門くんと数学のお時間
結局、その時間は浮かれて授業が全く身にならぬまま終わった。
「はーな! あんた注目あびすぎー」
「むーやっぱそうかぁ」
「大胆に竜門くんガン見してたのとか笑っちゃったよー」
教科書を抱えた芹ちゃんが思い出し笑いをしながら、私に体当たりしてきた。
その拍子に私の体が傾きだす。
あ、やばい、倒れる。
そう思うと同時にガシッと肩を掴まれた。
倒れずに済んだことにホッとしながら、支えてくれた本人を見る。
「キャーッ!?」
その人を見て思わず奇声を発してしまいながら、慌ててその手から離れた。
「うるっせーな、犬かよ。黙ってそこでお座りしとけ」
「えっ」
竜門くんが指差したのは、開けっ放しになっている掃除用具入れ。
「そこはちょっと……」
「なら耳元で叫ぶな」
「む……すいません」
上から目線でダーッと言われてしゅんとなる私を見て、竜門くんが小さく、本当に小さく吹き出した。
それから、私の頭に手を置いてわしゃわしゃと髪を撫で回した。
「じゃあな、犬。また来週」
「………うんっ!」
そして、最後の薄く少しだけ口角を上げて笑うキメ顔の破壊力と言ったら!
アイドルかと思うほどである!