詩集 イメージストリーム
【象徴詩 人の来た道】

寒々と吹き荒ぶ風、やり過ごし、ふと目をやると
街路樹が佇んでいる道の脇、うずくまる影。

よく見れば幼い少女。小刻みに身を震わせる。
血色は悪く体も痩せ細り声も出せない。

白銀の腰まで伸びた髪の毛は冷気を纏い、
透明の輝き放ち、ふんわりと少女を覆う。

街の中、手を差し伸べる者はなく、命はまさに
尽きようとしている様子。ただ独り。消えゆくままに。

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大通り。道行く人は暖かな服で着飾り
何事もないかの如く立ち去って、再び独り。

街からは明かりも消えて喧騒も静まりきって
街路樹の元に少女はうずくまり、しばらくすると

寝転んだ。崩れる様に横になり、動きを止めた。
動かない。動けないのだ。感じない。飢えも寒さも。

迫りくる死すら感じる事もなく身を横たえて
口元は僅かに開き、息遣い、消えそうなほど。

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残された力を尽くしうばたまの闇夜の奥に
向けて出す手は、現実には動かない。

次の朝、少女の姿は既に無い。そのことにさえ
誰一人気づく事なく通り過ぎ、時はうつろう。

人はみな、己も同じ歯車のひとつにすぎない
現実に気づく事なくいのちを削る。

 人の世の常無き常に流されて
   すがる物無く生きる哀しさ


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形式的には長歌で内容的には象徴詩です。

 象徴詩は描いた内容そのものが更に何かを意味
するものです。例えば太陽⇒光⇒輝くもの⇒理想の人
のように、太陽を描く詩で理想の人への思いを
表現する事が出来ます。
 そして、それを読んだ
読者もまた、「理想の人」という隠されたコード
によりそれぞれの思いを味わう事が出来ます。そ
れには読者にも自分の詩心がはければ象徴詩を味
わう事が出来ない事を意味します。
 言葉に表現された事だけを読むか、さらにそれ
が示す謎のコードを追いかけるか、それは読者自
身に委ねられています。


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