アナタの過ち



『お邪魔しまーす』

「はーい」

リビングから女性の声が聞こえた。

『お母さんいるんですか?』

階段を上りながら聞いてみた。

「あぁ、あいつ夜から仕事だからもうすぐ出ると思うけど」

『そっか』

「あ、入ったらしっかりドア閉めて」

部屋に入るなり智也は私に忠告する。

『ん?うん』

「ハムスターたまに籠から出て逃げちゃうからさ」

『ハムスターいるんだ。名前あるの?』

「プー」

『プー?可愛い名前』

智也の見てくれには合わない名前に少し笑った。



「あー…座る所無いからベットに座って」

『はーい』

6畳ぐらいある男の部屋はあまりにも汚かった。

2人でベットに座り、色々喋った。

普通の世間話だけど。

智也に保護観察がついている事も知った。

でも原因も現状も。
なにもかも。

結局興味なかった。

ただ1つ気になる事。

きっと過去の記録。

腕には"Sayaka"というタトゥー。

季節は夏がもうすぐ訪れる。
長袖に隠れた男の腕は、なんだか悲しかった。

一応日焼けはしてるみたいだけど、ほとんど長袖で過ごしているんだろう。

顔や首と比べると、少し白かった。

タトゥーを入れる程、愛した女。

若気の至りだとしても、好きな女の名前を彫るのはどんな気持ちなんだろう。

部屋の壁を見て、"Sayaka"の誕生日は4月10日だと知った。

智也のアドレスを思い出した。




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