アナタの過ち
『だめ、やめて』
でもこの日は何か違った。
何かひっかかる。
「無理」
私の両手は押さえ付けられ、唇が触れ、舌が入ってくる。
顔が離れた瞬間に私は呟く。
『…サヤカ』
一瞬だけ動きが止まるのを感じた。
「…別に、今の彼女じゃねぇよ」
そういう事を言いたいんじゃないのに…。
でも私は事情なんて知らない。
だから。
何も言えない。
何も言わない。
ただ…他人の、異性の、愛がよくわからない私は、なんとなく忘れないで欲しかった。
わからないから、"何を"忘れないで欲しいのかはわからなかったけど。
でも智也は私の両手を解放する事なく、行為を続けた。
わからない私が、わからない思いを伝えるなんて。
よく考えたら馬鹿げた話。
いつも通り、流れに身を任せた。