アイボリー~少しだけあなたにふれてもいいですか?
コンビニ横の公園でおにぎりにかぶりついた。

桜の葉が青々と茂っている。

いつの間にか春は終わり、夏の気配を感じていた。

木漏れ日が、美鈴の足下をユラユラと漂っている。

恋って、なんだか辛い。

拓海が恋ができないのがなんだかわかるような気がした。

はじまりはときめくけれど、それを喜ばしいと思う周りの人間てどれだけいるんだろうか。

恋なんて一人よがりなもので、他人からは知ったこっちゃないこと。

時には、その他人を傷つけることすらあるわけで。

「何黄昏れてる?」

その声は野太くて、最近聞いたことのある声。

声の方を振り返ると、パンにかぶりついて笑っている奏汰が立っていた。

「お昼にコンビニ寄ったら、お前が公園に歩いて行ってるの見かけたから。」

奏汰は、そう言いながら美鈴の座るベンチの横に腰掛けた。

「お仕事中ですか?」

泣き顔を見られたくなくてうつむいて尋ねた。

「こんな格好して仕事じゃなかったおかしいだろ。」

制服姿の奏汰は、豪快に笑った。

明らかに泣き顔の美鈴に、敢えて何も触れずにいてくれてるのがわかった。

奏汰はいつでも優しい。

今はその優しさに甘えたい気持ちだった。

「今日はバイトか?」

「そうです。あ、こないだはご馳走さまでした。」

「おお。こちらこそ付き合わせて悪かったな。」

「悪くなんて全然。」

「じゃ、また今度誘うよ。」

奏汰は残りのパンを口に押し込んで、すくっと立ち上がった。

そして、美鈴の肩をポンポンと2回叩くと、

「無理すんな。」

優しい声でそう言って、その場を離れて行った。



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