アイボリー~少しだけあなたにふれてもいいですか?
そんな風に優しくされたら泣いちゃうっていうのに!

せっかく泣き止んだはずの目からまた涙があふれ出した。

おにぎりが涙でぬれて、塩味が増してる。

今日の自分は絶対おかしい。

薫のせい?

それとも、拓海のせい?

それとも、自分のせい・・・?

おにぎりを食べ終わって、牛乳を一気に喉に流し込んだ。

息ができなくて、苦しい。

ようやく呼吸が戻る。

長く息を吐いた。

ベンチから腰を上げて、リュックを肩にかける。

涙は止まったけど、きっと目ははれぼったいままだろうと思う。

こんな日に拓海と食事だなんて、サイテー。

でも、行く。

絶対行くんだから!

美鈴は意を決して本屋に向かって歩き出した。

本屋の扉を開けた。

目の前で本の整理をしていた拓海が美鈴に顔を向けた。

「やあ。」

拓海は少しだけ笑った。

「お疲れさま。」

美鈴はぎこちなく言う。

いつもの二人の関係が少しだけ違うように思えた。

食事に行くこと。

こんな約束したことなかったし。

好きかもしれないって言われてるし。

だから拓海は少し笑ったのかもしれない。

少しずつ拓海との距離が縮まっていくことに、美鈴は言いようもないほど幸せな気持ちだけど、それと同じくらいの得体のしれない不安が膨らんでいた。





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