アイボリー~少しだけあなたにふれてもいいですか?
拓海はGパンの後のポケットから携帯を取り出し時間を見た。

「もうすぐ22時だけど、一人で帰れる?」

「まだバスがあるからそれに乗って帰るわ。」

「気をつけて。」

「うん。」

そして、二人は公園で別れた。


バス停までゆっくりと歩く。

能面男と初めて顔を合わせてから2週間ほどしか経ってないのに、いきなり一緒に店を守ることになるなんて。

本当に妙なことだ。

ただ、今ひとつ実態が掴みにくい彼と二人でいるのは、正直ぎこちない。

1週間、一緒に仕事をすればそれも変わってくるんだろうか。

バス停に着いたのと、バスが来たのとはほぼ同時だった。

バスの中で揺られながら、明日の仕事の分担を考えていた。

とりあえず、拓海は人に触れたがらないから接客はさせないでおこう。

電話関係と掃除、力のいる仕事メインで。

私は会計と手配の指示、掃除くらいか。

それにしても、拓海という人はなんて冷静なんだろ。

こんな状況に陥ったら普通焦るよね。

よくもまぁ、何を根拠に「大丈夫」なんて言えるんだろ。


だけど、今の美鈴にとっては、それくらい冷静な人間がそばにいてくれることはありがたくもあった。

さて、どうなるのかねぇ。明日から。

美鈴はゆっくりと深呼吸した。
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