アイボリー~少しだけあなたにふれてもいいですか?
「あれ?美鈴顔赤いよ。」

言われたら余計に意識して赤くなるからやめて!と思いながら、美鈴は首をぶんぶん横に振った。

「違うって、全然そういうのじゃないから!」

お水を一気に飲み干した。

「別に構わないよ。美鈴が好きになってもしょうがないくらいかっこいいもん。」

薫は妙に冷静に言った。

「だけど、彼は恋ができない人だから。」

彼は恋ができない。

女性に触れられない。

好きになっちゃいけない人。

変わり者だし、全くそんな気持ちないはずなのに、初めて会った時から気になっていた。

ダメだ。

自分で認めちゃったら終わり。

自分の頭の中の、拓海の存在をかき消した。

「変わった人っていう印象には変わりないよ。だけど、そんなに悪い人でもなかった。」

美鈴は心をできるだけ落ち着けて言った。

「うん。彼はいい人よ。少しぶっきらぼうなところもあるけど、基本は繊細で優しいわ。」

どうして、女性に触れられないくらい女性が苦手になってしまったのか。

薫は知ってるんだろうか。

知りたいと思うけど、薫の口から聞くのはなぜだか抵抗があった。

「どうして、女性に触れられないんだろうね。」

ぽつりとつぶやいてしまって、慌てる。

「それは、教えてくれなかった。」

薫は、髪を掻き上げて、ようやくパスタを口にした。

なんだかホッとする。

薫も知らなかった。

きっと、そう簡単には教えてくれない何かがあるんだ。


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