アイボリー~少しだけあなたにふれてもいいですか?
「これから、知り合いの店に服買いに行くんだけどさ、よかったら一緒にどう?」

「どうして?」

「どうしてって・・・。」

拓海は珍しく目を泳がせた。

「すげーおしゃれな服がいっぱいあってさ。君も絶対気に入ると思う。あと、」

「あと?」

「自分のシャツを買おうと思ってて、どうも、自分の服選ぶのって苦手でさ。君ならどう選ぶのかちょっと興味があって。」

「なにそれ。」

美鈴は吹き出した。

「要は私に洋服見立ててもらいたいってこと?素直に言えばいいのに。」

「そういうことにしとくよ。君が納得するなら。」

変な奴。

そう思いながらも、少し照れた拓海を見ながら、気持ちが高ぶっていた。

拓海は、自分のリュックを肩にかけると店の出口にゆっくりと歩いていった。

「すぐ用意するから、外で待ってて。」

美鈴は素早く手元のノートや電卓を片付けた。

そして、自分のリュックを手にとって、出口まで走る。

外に出ると、周囲はもう随分薄暗くなっていた。

空を見上げると、霞がかった丸い月が浮かんでいた。

「明日はお天気崩れるかもね。」

ポツリとつぶやく。

横にいた、拓海も月を見上げた。

「ああ。」

彼と横に並んで月を見上げてることが不思議だった。

最初に出会った時には、そんなことも予想だにしなかったから。


< 65 / 143 >

この作品をシェア

pagetop