アイボリー~少しだけあなたにふれてもいいですか?
そして、二人肩を並べてゆっくりと駅の方へ歩いて行った。

いざ、肩を並べると何しゃべればいいのかわからない。

二人の間の空気が、駅までの道のりを無言にさせていた。

切符売り場の前で、ようやく拓海が口を開いた。

「二駅ほど向こうなんだ。」

「了解。」

切符を買うと、二人は別々の改札口を通って構内に入る。

二人でどこかへ向かうということに、美鈴は気持ちが高ぶらずにはいられなかった。

まるでデートみたいだったから。

電車のつり革を持って、ちらっと横目で拓海を盗み見る。

いつものきれいな横顔が心なしか緊張しているように見えた。

恋のできない男が、女の子を誘うってどういう意味があるのかしら?

美鈴は、うつむいてわからないように微笑んだ。

興味があることは確かだわ。

そう思う。

嫌われてはいないってことは、少しは脈があるのかもしれない。

そんなことを思いつつ、ふと薫の顔が頭に浮かぶ。

薫にこんなところ見られたらどう思われるかな。

私が薫を裏切ったと思う?

思わず辺りを見渡した。

でも、私から誘ったわけじゃないもんね。

私から誘ったんなら罪だけどそうじゃない。

自分自身納得して、裏切りではないって思うようにした。
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