アイボリー~少しだけあなたにふれてもいいですか?
「実は僕も若い頃剣道やってたんだよ。」

宮浦さんは、少し恥ずかしそうに笑った。

「そうなんですか。」

拓海も初耳だったようで、目をいつもより見開いて宮浦さんを見た。

「懐かしいな、こういう手。」

美鈴は二人に見られている剣道あがりの手を思わず背中に隠した。

だって、決してきれいな手とは言えないんだもん。

剣道やってた手なんて、別に褒め言葉でもなんでもない。

「ごめんごめん、女性の手に気安く触れちゃって。ところで君、名前は?」

思わず手をひっこめた美鈴を気遣って宮浦さんが尋ねた。

「美鈴です。」

「美鈴ちゃんか。剣道やってたら根性座ってるだろ。拓海、いい娘見つけたな。」

宮浦さんは、拓海にからかうような視線を送った。

「いい娘」だなんて、単なる同じバイトしてるだけだっての。

なのに、拓海は何も言い返さず、ただ黙って困った顔をして笑った。

そして、静かに口を開いた。

「この娘は、見かけによらず根性はそれほどないですよ。」

なっ!!?

思わず、口を開けたまま拓海をにらんだ。

「僕も初め会った時はもっと根性座った娘かと思ったんですけど、結構フラフラミーハーな感じです。」

「失礼な!そんな知らないくせに。」

宮浦さんの前であることも忘れて、少し強い口調で言い返した。

「だって、本当でしょ。」

拓海は真顔でそんな私にあっさり切りかえした。

こんな場所で喧嘩売ってどうする気?訳わかんない。

確かに、私はフラフラしてるわよ。ミーハーだわよ。

だからって、こんなところで言わなくてもいいじゃない?











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