アイボリー~少しだけあなたにふれてもいいですか?
その後、すぐに店長に今日までの売り上げや引き継ぎ事項を伝えた。

拓海はもくもくと店内で仕事をしている。

無駄のない動き。

彼はきっとどんな場所でもこうやってスマートに仕事をやってのけちゃうんだろう。

それに比べて、このお店では拓海よりキャリアは長いはずなのに、どことなく危なっかしい仕事をしている自分が情けなくうつった。

これじゃ、就職なんてまだまだ考えられないわ。

自分のやりたいことなんて、そんな簡単に見つからない。

軽くため息をついた。

「おやおや、どうしたんだい。美鈴ちゃん随分お疲れかな。」

ため息をついた美鈴に気付いた店長が心配そうに顔をのぞき込んだ。

「あ、すみません。大丈夫です。」

「学校も随分休んでくれてたみたいだけど大丈夫だったのかな?」

「はい、学校は大丈夫です。友達にノート頼んでるし、親しい教授には事前に訳話して理解してもらってるから。」

「今日は早めに上がってくれていいからね。僕も随分休ませてもらって、この通り元気になったからね。」

店長は大げさにポパイポーズをした。

「いやだー店長。か細い腕出して!まだまだ頼りないわー。」

その姿に思わす吹き出して笑った。

店の奥にいた拓海も少し笑っていたようだった。

「ありがとう。ほら、今日は剣道の日じゃなかった?せっかくだから久しぶりに運動しておいでよ。」

あ、そうか。

剣道のことすっかり忘れていた。

久しぶりに行ってみようかな。

店長に言われて、その気になった。



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