アイボリー~少しだけあなたにふれてもいいですか?
体中に汗をいっぱいかいて、稽古が終わった。

気持ちのいい汗だ。

運動した後にかく汗って、サラサラしていてきれいだと美鈴は思う。

体中の悪いものが流れ落ちていくような気持ちよさがあった。

面を外して、面タオルと取ると、正面に奏汰が同じように面タオルを外していた。

いつもの奏汰なのに、なんだかいつもよりクールで大人っぽい感じがして、目が合ってドキッとする。

いかんいかん。

すぐに目を逸らした。

拓海に恋してる自分はきっと今恋愛体質になってるんだ。

美鈴はそう思った。

昔付き合ってた時も、妙に男性に対して敏感になってたように思う。

普段なら気づかない魅力も、気づきやすくなっていた。

今もきっとそうなんだ。

ちょっと誘われて、少し意識しすぎな自分がなんだか嫌だった。

拓海にも意識しすぎだし、ちょっと誘われたくらいで奏汰にも意識してる。

なんなんだろう。

運動でドキドキしているのか、これから奏汰と二人で会うことにドキドキしているのかわからない。

だけど、いつになく胸がドキドキしていた。

いつもよりあっさりと道場を後にして更衣室へ向かった。

そして、いつもより少し念入りに汗を拭いて、髪をとかした。

外に出ると、風が気持ちいい。

美鈴は鼻からいっぱいに空気を吸い込んだ。

警察署の門を出ると幹線道路が真横に走っていて。その向いに奏汰と待ち合わせているコンビニが明るく浮き上がっていた。
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