アイボリー~少しだけあなたにふれてもいいですか?
男の人と待ち合わせるなんていつ以来だろう。

美鈴は少し考えながら横断歩道をわたる。

こないだ拓海と一緒に歩いた日も待ち合わせって感じではなく、ただ一緒に帰った延長だった。

そう考えたら随分久しぶりのような気がした。

相手が奏汰だからっていうよりも、男の人と待ち合わせをするってことに美鈴は少し緊張する。

コンビニの明かりが次第に近づいてきた。

奏汰はもう来てるだろうか。

そっとコンビニの扉を開ける。

背の高い奏汰だから、いればすぐ分かるはずだ。

だけど、辺りを見渡してもまだ奏汰の姿はなかった。

なぁんだまだじゃん。

女子を待たせるなんてサイテ-。

美鈴はそう思いながらもなんとなくホッとしていた。

「よっ!」

その時、背後からポンと肩を叩かれた。

その声は?

振り返ると長身の奏汰が満面の笑みで立っていた。

「あ、お疲れさまです。」

思わず声が小さくなる。

「お前さー、こそ泥みたいにおどおどしながらコンビニの扉開けてたぞ。警察に目ぇつけられるような態度取るなよ。」

奏汰は大きな声で笑った。

「こそ泥って。失礼な!」

美鈴は、奏汰を突き返した。

警察に目ぇつけられるって、そういえば奏汰は警察官だったっけ。

すっかり忘れてたわ。

美鈴は、そのまま奏汰に続いてコンビニを出た。

奏汰はコンビニの前の駐車場をすたすたと歩き、奥に止めてある一台の車の前で立ち止まった。
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