アイボリー~少しだけあなたにふれてもいいですか?
10分ほど車で行ったところにそのお寿司屋はあった。

民家の中に隠れ家的な雰囲気のそのお店は常連客で賑わっている。

もちろん、それなりの身なりの大人達が席を占領していた。

学生らしき人は美鈴だけのような気がした。

なんとなく落ち着かない美鈴は、辺りをキョロキョロ見渡しながら奏汰の後に続く。

空いていたカウンターに二人並んで腰掛けた。

「好きなもの頼んでいいよ。」

カウンター前に今日のオススメのネタが並んでいた。

「私、お寿司は何でもいけるからお任せします。」

少し緊張気味の美鈴は小さい声で奏汰に言った。

奏汰はそんな美鈴を愉快そうに眺めながら、

「大将、とりあえず何貫かオススメお願い。この子はまだお子様だからわさび少なめで。」

と、正面で握っている大将に声をかけた。

「もう!お子様って失礼な!わさび全然オッケーです。」

美鈴は、奏汰の腕をポンと叩くと、大将に向かって少し大きめの声で言った。

「あいよー。」

大将は、奏汰と美鈴の顔を見くらべながら、笑顔で返事をする。

「ほんと、お前って笑えるよな。まじでこんなお寿司屋初めてだったんだ。」

「そうですよ。学生は普通こんな高級なお店には来ないって。」

「確かにな。俺も学生の頃はこんな店来たことなかったわ。」

いつの間に頼んだのか、奏汰の目の前に大きな泡のジョッキが置かれていた。

美鈴の前には熱々のお茶。

「お前も飲めるんだっけ?」

ジョッキに手をやりながら、奏汰は尋ねた。

「あんまり。お茶でいいです。」

「そうか。別にジュースでも構わないぞ。ここのオレンジジュースはなかなかおしいし。」

「もう!また子供扱いして。」

美鈴はプイと横を向いた。
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