アイボリー~少しだけあなたにふれてもいいですか?
あふれる涙を止められないまま、本屋に着いた。

しばらく止めた自転車にもたれて、気持ちを落ち着ける。

何度も深呼吸した。

「早いね。」

少し離れた場所から声が聞こえた。

頬の涙が乾いて痛い。

声の方に視線を向けた。

「泣いてるの?」

拓海はその場に立ちつくしたまま、じっと美鈴を見つめていた。

泣いてるの見られたくない。
 
拓海に背を向けて自転車のかごに入れた自分のリュックを抱えた。

「少し早く着いちゃった。お昼買ってくる。」

拓海に背を向けたまま、駅前のコンビニに向かって走り出した。

せっかく今日は一緒に食事なのに、こんな湿っぽい顔見せたら台無しだわ。

美鈴は鼻をすすった。

どうして泣いてるのか美鈴にもわからなかった。

コンビニに入っておにぎりのコーナーの前に立った。

お昼前だし、まだお腹も空いてない。

ただ、入ってしまったからには何か買わなくちゃ。

明太子おにぎりを一つカゴに入れた。

あと、牛乳。

イライラする時は牛乳でカルシウムとるに限る。

おにぎりと牛乳の組み合わせは、周りの友達は全く合わないというけれど、美鈴は好きな組み合わせだった。

給食でも、カレーライスに牛乳っていう組み合わせは違和感があったけど、なぜかおいしいと思った。

「私ってやっぱり相当変わってるんだわ。」

カゴの中身を見ながら、美鈴は小さな声でつぶやくとレジに向かった。
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