見えない何かと戦う者たちへ

ソノは
職員室のドアを前に深呼吸した。

そして
今一度手を確認する。




「そのくん!

私も手伝いにきたよ、
一人じゃ大変でしょ?
でもどうして先生はソノくん一人にやらせるのかなぁ」

いきなり
視界に現れたと思ったらそのまま彼女は
話だした。

おかげで落ち着いていた心臓が
また急に暴れだした。





ーガラガラガラー

美結は職員室のドアを開けるなり
大声で先生の名前を呼んだ。

ソノの深呼吸は無意味になった。







「ん?相田が週番だろ?」

「そのくん一人でこの量持たせる気ですか?」

「いや、先生も手伝ってもいいが…
いいのか、相田?」







ソノはスタスタと職員室へ入った。

真っ直ぐ先生のところまでいき、
持って行くだろうノートを全部持った。

そのまま
一礼して職員室を出た。








「えっあっ待って!」

「あっおい!待て!」







先生の言葉に耳を傾けず
美結はソノのあとを追って職員室を勢いよく飛び出した。


もちろん、
勢いよくドアを閉めたのでかなりひどい音が
職員室に響いた。


先生も心配なになって立ち上がったが
汚ない机上から資料やノートが落ちた。





「あの白い子に、相田くんって…
特進クラスで先生の生徒ですよね?」

普通科クラスの担任が資料などを拾いながら
驚いたように言った。



「…はい、相田は特進の中でも
とても成績がよくて
和呂は見た目がかなり目を引きますが
思いやりのあるいい子です。

…が、あの二人は相性が悪いと思うので
ちょっと心配ですね。」



ソノたちの担任も
落ちたものを拾いながら苦笑した。




「あら、どうしてですか?
美男美女でお似合いじゃないですか」




「あっいえ、そういうことではなくて…

和呂はいい子なんですけど
ちょっとお節介が過ぎちゃう子でして、

相田は、そのぉ
あまり人と関われない子なんで…(汗)」





少し開いたままの職員室のドアから
また別の生徒が入ってきた。

先生たちもそれぞれの
仕事に戻った。









「待ってそのくん!
やっぱり私も半分持つよ」

そう言ってソノが持っていたノートの束を
半分取ろうとしたときだった。



「美結だめ!」

―バサァー

明日香の言葉と同時に
ノートが全て廊下に落ちた。






明日香と垣内が
二人の元へ駆け寄ってきた。

美結は驚いたものの
慌ててノートを拾い集め出した。

ソノの上履きに乗ったノートを拾おうと
彼の顔を下から見た。






「…そのくん?」






彼はガタガタと震えていた。


ノートを落とした状態から
変わっていない。


ただ青ざめた顔で立っていた。









「その!大丈夫だ!」

「…その、手洗っておいで」




垣内と明日香が
ソノから少し離れたところから落ち着かせようとしている。


ふと我に返ったソノが
美結を見つめた。







「…ごめん」









彼は廊下を走って
どこかに行ってしまった_____。






< 12 / 84 >

この作品をシェア

pagetop