見えない何かと戦う者たちへ

「あっそのくん、
私今から飲み物買いに行くけどなんかいる?」


「…あっえっと
欲しいけど…自分も一緒に行くわ」



階段近くで出会ったソノと美結は
一階にある自動販売機まで共にすることにした。

美結は自分が買ってくるよと言ったが
ソノは頑としてついてくると言った。





「うーん、どれにしよーかなぁ」

美結は自動販売機を前に悩んでいた。

ソノも彼女の隣で悩んでいた、
彼女とは違う理由で。



彼は手袋を確認すると
意を決したかのように手を握り、自動販売機のボタンを押そうとした。

そこでさすがの美結も気がついた。

「…そのくん、
どれ飲みたい?私、押すよ?」





ソノは握った手を引っ込めて
頭を下げ小さな声で謝った。

それは本当に小さな声で
美結の胸も同じように小さくなった気がした。






結局、
美結が二人分のボタンを押し出てきた物も
彼に渡した。

彼は少し怯えている様子で
それを受けとり、悲しそうに眉を下げた。

美結はとたんに
彼の笑った顔がみたい!と思った。






「そのくん!そろそろ文化祭だね!
たっくさん、楽しもうね!」

美結はうんっと背伸びをして笑ってみせた。

ソノも彼女につられて
笑おうとして成功したのかどうかは置いといて
口角だけ上げた。





どうも
ソノは笑うのが下手なようで
本人は笑っているつもりだが表情が変わらない。

だから
いつも無表情とみんなに言われる。













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