見えない何かと戦う者たちへ
「いいか、お前たちは選ばれし者なんだ!
なのになぜだ!
さぁ今すぐ自分を解放するんだ!」
懍が黒板を背に
大声で皆に訴えている。
「姉様の言う通りだ!
みなのもの、どうして能力(ちから)を覚醒させない!?」
懍の横で中二病も訴えている。
ただ今、
ロングホームルーム中。
来月に行われる文化祭のクラス実行委員を決めようと
話し合っている。
が
誰も立候補しないので
懍と中二病の演説会になりつつある。
実はここに
手を挙げるかどうかで絶賛悩み中の子がいる。
さっきから
プルプルと身体を震わせカチコチに固まっている。
明日香はそんな美結を見かけて
手を挙げた。
「おっ明日香、やってくれるのか!?」
「いや、立候補じゃなくて推薦でもいいですか?」
「おぉ!?どなたを覚醒させてくれるのじゃ?」
設定があやふやな中二病が言い終わるのを前に
明日香は美結を指差した。
たが差された本人は
まだオドオドしていて迷っているため気づいてない。
「みゆう~!
明日香、ナイス!美結なら適任だよ!」
懍はメロメロになって答えた。
ふむふむと
中二病は黒板に名前を書きはじめた。
その頃になると
ようやく指名された美結本人も気づき始めていた。
やってることはさっきから変わっていないが、
あきらかに今の方がテンパっているのはわかる。
垣内と明日香は
同じように美結を見るとそのままの表情でソノを見た。
ソノは相変わらずホームルーム中だというのに勉強をしている。
勉強しているから頭がいいのももちろんあると思うが、
ソノは普通にしていても賢い気がするのは垣内と明日香だけなのだろうか。
二人はソノ自身から立候補しないものかと様子を覗ったが
それどころか彼は今どんな話になっているのかさえも理解していないだろう。
むしろ、
理解したいとは微塵も考えてない気がする。
「「…はあ…」」
決して小さくはないため息が2人分聞こえた。