見えない何かと戦う者たちへ
「垣内が恥ずかしがっているだと!!!」
どこから聞いていたのか
はたまたどこから湧いて出てきたのか懍が二人の側にいた。
どうやら彼女独特のBL臭を
察知して飛んできたようだ。
彼女の瞳はハートが見えるし、
よだれも出かかって見えるので間違いないだろう。
「垣内よ、
ずっと言葉につまっていたようだけど」
懍は全てわかっているわっ
と言いた気な態度で
垣内の肩を叩いた。
なぜだろうか、
二人は悪寒がした。
懍は二人を押しどけようと二人の肩を
押そうとしてソノだけ避けたので転けかけ
前に進みながら演技を始めた。
「『なんだよ、言いたいことあるなら
ハッキリ言えよ、お前らしくない』
かーらーの!
『いやっあっあのさぁ…
そのって好きな奴とかいんの、かなぁ…って』
と恥じる垣内!かーらーの!
『はっ!?(コイツまさか気づいて…)別にいねぇよ』
『えっあっそーなんだ、へー』
と言いながらも安堵する垣内!
かーらーの!」
「りんっ!」「りんちゃん!」
たぶんクライマックスだったのだろう、
懍はいきなり現実に戻され肩を落とした。
だが
懍にとってえんじぇるである美結が来たことにより、
もう男子二人なんてどーでもよくなったようだ。
さっきまで懍がいた場所はもう
もぬけの殻で、
気づいたときにはすでに美結に抱きついていた。
「そのくん、ごめんね
懍ちゃんが迷惑かけちゃって…」
美結が懍に抱きつかれたまま
しょんぼりした。
ちょっと可愛いなと思ったソノだった。
「…えっ迷惑かけたのそのだけ?俺は?」
「黙れ垣内!あの二人の世界に入るつもか!」
明日香は垣内の襟首をつかんだ。
グエッと変な魚のような声を出しながら
垣内は静止した。
懍が抱きついたままだが
美結がしょんぼりしているのを
普段は無口なはずのソノがなんとか励まそうとあたふたしている。
客観的には
ただイチャついているカップルにしか見えない。
そんな彼らを見た明日香と垣内は
安堵と嬉しさ、そして寂しい気持ちが複雑にまざった表情をした。
それに気づいたのは懍だけで、
その後も二人は言葉では表しにくい表情を何度も浮かばせた。
「…そろそろ、剥がした方がいいかしら?」
「…そうだな、剥がすか」
懍は明日香と垣内によって
連行されたのは言うまでもない___。