見えない何かと戦う者たちへ
ある日
ソノは悩んでいた。
教室は
まだ朝だというのにワイワイガヤガヤとうるさい。
もうすぐ
文化祭が近づいてきているからだろう。
まだ当日でもないのに
ここ最近は毎日お祭り状態だ。
だが
ソノの顔は曇っていた。
理由は垣内にある。
言いにくそうに何度も口をつぐみ、
結局懍が来たことでうやむやになって聞くことはなくなった。
垣内が何を言いたかったのか
とても気になるのだ。
だが本人が言いにくいことを
自分から聞き出すこともできず悩んでいた。
そして、
実は今。
ソノの机の前にしゃがんだ美結がいる。
今というか
ずっといる。
黙って下から彼の顔を見ているのだ。
でも
中々ソノが気づいてくれないので
退屈になってきたところだった。
明日香はまだ朝練から帰ってきてないし、
懍は中二病となにやら盛り上がっている。
垣内は文化祭のことで
彼のもとに男女問わず群がっている。
ようするに暇だったので
ソノを驚かせようときたのだが、
まったく上の空でこちらを見向きもしない。
見てなかったらさすがに
気づくことはできないと思いいたったのと
しゃがむのも決して楽な態勢ではないと思った美結は突然立ち上がった。
「おはよう!そのくん!」
二人の間には静かな空気、
いや沈黙が続いた。
美結は片手を上げて
元気よく挨拶をしたにも関わらずまだソノは気づかなかったのだ。
「……」
さすがの美結も
なんかヤバイと感じとったようで腕を組んで考えた。
ソノと仲がいい
垣内に相談するのが一番と思ったものの当の本人はやっぱり忙しそうだ。
こうなったら
私自身が頑張らなきゃと"よしっ"と言ってもう一度
ソノの名前を呼んだ。