見えない何かと戦う者たちへ


「…あぁ、はよ」


「そのくん?大丈夫?元気?」




ソノは以前から
近い距離に人がいるのは苦手だと言っていたので
美結は机に触れるか触れないかの距離で声をかけた。


その気づかいに
ホッとするのとモヤッとする自分がいて戸惑うソノがいた。

首をバレない程度に傾けた。

(人が近づいてくるの、
苦手なはずなのにな…。)



彼女の親切は
さりげなさすぎてあまり人に気づかれない。

見た目はこれだけ目を引くのに
親切な行動を見かけている人はなかなかいない。

もしかして
隠れてやろうとしているのかもしれない。





「いや、大丈夫っていうか
普通に元気だけど…?」


「…ほんとに?」





瞳をのぞくため美結は近づこうとして
ハッと我に返ったように距離をとった。

ソノはなんだか
面白くなって笑った。

美結は何を恥じているのかよくわからないまま
顔を赤らめた。





「えっなっなんで、笑って…」

「いや、なんか可愛くて…えっ!?」

「えっ!?」







言った本人も驚いた。

言われた美結の方も当然驚いている。

二人とも口元を手で隠すようにしたまま
硬直している。





__ガラガラ_

そのとき、
ちょうど部活の朝練から明日香が帰ってきた。



教室に入ってすぐ、
お互いに硬直した状態で見つめあっている二人を見つけた。



「…えっ、なに?
なんかおもしろい状態なんだけど」




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